「まひるがまひるのままでいられないなら、それは世界中の人間が間違ってる」
近年は性的マイノリティの人々の存在が注目されるようになり、ひと昔前と比べればかなり認知されてきたように思います。(必ずしもいい面ばかりではないですが。)そういう題材の娯楽作品も増えました。性的マイノリティとはいってもその内訳は様々ですが、今回取り上げる「トランスジェンダー」もそのひとつです。(「同性愛」は性指向による区分でまた別物です。)オタクコンテンツでも、いわゆる「男の娘」(これはどちらかというと「女装男子」の意味合いが強い気がします)が流行りのひとつとなっていますが、現実の当事者が抱える葛藤や差別まで言及した作品はあまりありませんでした。そんな中、私がプレイした昔のゲームで印象的だった作品を紹介したいと思います。
(「ねがぽじファンディスク」より)
近年は性的マイノリティの人々の存在が注目されるようになり、ひと昔前と比べればかなり認知されてきたように思います。(必ずしもいい面ばかりではないですが。)そういう題材の娯楽作品も増えました。性的マイノリティとはいってもその内訳は様々ですが、今回取り上げる「トランスジェンダー」もそのひとつです。(「同性愛」は性指向による区分でまた別物です。)オタクコンテンツでも、いわゆる「男の娘」(これはどちらかというと「女装男子」の意味合いが強い気がします)が流行りのひとつとなっていますが、現実の当事者が抱える葛藤や差別まで言及した作品はあまりありませんでした。そんな中、私がプレイした昔のゲームで印象的だった作品を紹介したいと思います。
※近年ではトランスジェンダーという名称の解釈も拡大されてきていて、見た目男性・性自認が男性で女装だけしている人もトランスジェンダーに含まれるという見方もありますが、ここではトランスジェンダーを狭義のトランスセクシャル(心と体の性別が一致しておらず、身体違和がある人。医学用語では性同一性障害)と同じとさせてください。生来属性と嗜好は違うものなので、私個人はこれらは違う区分になると考えます。
ひとつがアクティブのアダルトゲーム「ねがぽじ~お兄ちゃんと呼ばないでっ!!~」(2001年)。後にリーフの作品でシナリオを書かれるようになった枕流氏の作品です。(アクティブの方はすでに活動停止し、消息不明のようです。なので、リンクはInternet Archive経由です。)ボリュームとしてはごく小規模な小品ですが、この作品は正に先見の明と言える秀作だと思います。
主人公は、小柄で能天気な女の子・広場まひる。本人も周りもずっと女性だと思い込んできたのが、実は身体が男だった?!という話です。まひるがどうしてそういう状態になっていたのかは十分な説明がされているとは言えないのですが、彼女は性自認が完全に女性なので、状況としてはトランスジェンダーと言っていいでしょう。事実が発覚した後、まひるは入院させられますが、退院してから「女子の制服のまま」登校を再開。実家も出て一人で暮らすことになり、本人は何も変わらないのに、まひるの生活は一変することになります。
ストーリーは基本的にコメディで、枕流氏のノリのいい文章が楽しいです。クラスメートの親友・香澄、放送部の仲間・美奈萌、引っ込み思案な後輩・小鈴が攻略対象となります。トゥルーエンドルート以外は短めですが、トゥルーエンドはかなり見ごたえのある内容(ただし鬱展開)になっています。
まひるがトランスジェンダーなので、他の女の子との関係は異性愛というより同性愛に近い感じがしますが、実際の性行為は男性の体で行うのでそのへんが少し混乱する気もします。とはいえ、プレイヤーはあくまで第三者ですし、そこは本人たちにしかわからない愛情でしょう。しかし、その一方で少数の友人以外はまひるを理解せず、同級生にも教師にも彼女が排他されていく様子は、後にブームとなった男の娘ものとは一画を外すリアリティがあります。(実際にトランスジェンダーの人がプレイして、共感したという感想もWeb上で見ました。)
まひるがトランスジェンダーなので、他の女の子との関係は異性愛というより同性愛に近い感じがしますが、実際の性行為は男性の体で行うのでそのへんが少し混乱する気もします。とはいえ、プレイヤーはあくまで第三者ですし、そこは本人たちにしかわからない愛情でしょう。しかし、その一方で少数の友人以外はまひるを理解せず、同級生にも教師にも彼女が排他されていく様子は、後にブームとなった男の娘ものとは一画を外すリアリティがあります。(実際にトランスジェンダーの人がプレイして、共感したという感想もWeb上で見ました。)
もう本当にまひるがすごくいい子で、声優さん(この作品では非公開)の演技もはまっていると思います。男子の級友・透も本当はまひるが好きなのに身を引くしかない感じが、切なくていい味出してます。ファンディスクも発売されており、ぜひ合わせて楽しんでほしい作品です。
冒頭の引用は、まひるの数少ない理解者であるまひるの妹・ひなたのもの。現実のトランスジェンダーの人にも伝えたい言葉です。
冒頭の引用は、まひるの数少ない理解者であるまひるの妹・ひなたのもの。現実のトランスジェンダーの人にも伝えたい言葉です。
もう一つは、PS2の「北へ。~Diamond Dust~」(2003年今はなきハドソン、Internet Archive経由)です。元々ドリームキャストで発売された「北へ。~White Illumination~」から何年も経ってから、ファンの熱望を受けて制作された続編です。東京在住の大学生の青年が、夏休みに北海道へ旅行に出掛け、そこで体験するラブストーリーです。特徴的なテーマソングも話題になりました。イラストレーターのNOCCHI(大槍葦人)氏は、広井王子氏がこの作品のために発掘した人です。
※なんと今年のネット記事で取り上げられていたので、紹介します。
『北へ。White Illumination』3月18日で20周年!
※なんと今年のネット記事で取り上げられていたので、紹介します。
『北へ。White Illumination』3月18日で20周年!
ゲームでは魅力的な女の子がたくさん登場しますが、Diamond Dust(以下DD)では、隠しキャラにトランスジェンダーの攻略対象が登場します。それも主人公の親友という立場で。他の部分は従来とあまり変わらないギャルゲーでありながら、「男の娘」ではなくごく真面目にトランスジェンダーを描いているこの作品は、この年代のゲームとしては非常に稀有だと思います。
このヒロイン「まふゆ」は、今は性適合手術の費用を稼ぐために夜ホステスの仕事をしていますが、実は以前から主人公のことが好きで、思いがけなくそれがばれてしまうというストーリーになっています。主人公の友人としては物静かでクールな印象だった彼(彼女)が、女性の姿では明るくお茶目な性格になっているのは、彼女が普段感じている抑圧を窺わせます。(続編では、さらに他の友人たちにカミングアウトする話が描かれています。)
このヒロイン「まふゆ」は、今は性適合手術の費用を稼ぐために夜ホステスの仕事をしていますが、実は以前から主人公のことが好きで、思いがけなくそれがばれてしまうというストーリーになっています。主人公の友人としては物静かでクールな印象だった彼(彼女)が、女性の姿では明るくお茶目な性格になっているのは、彼女が普段感じている抑圧を窺わせます。(続編では、さらに他の友人たちにカミングアウトする話が描かれています。)
個人的にやや疑問だったのは、彼女を異性愛者の同性の友達だと思って接してきた主人公や他の友人たちが、あまり葛藤なく事実を受け入れているところでしょうか。現実でトランスジェンダーの人が直面する大きな障害がそこですから、もう少し突っ込んでほしかったと思います。もちろん理想としては、性自認や性指向が何であれ友情には関係なく、主人公と友人たちの態度はむしろあるべき姿です。そういう意味では理想的な表現と言えるかもしれません。
そもそも彼女はかなり美人なので、そこが現実と乖離していると言えばそれまでですが。障害者の描き方でもいえることですが、架空の娯楽であるゲームでは理想の相手だけ見たいというのも当然の欲求であり、私自身もそれは否定しません。ただし、そういうものしか触れていないと偏見を助長することにもなりかねない点は、注意すべきと思います。
※もちろん「北へ。DD」は、他の女の子とのストーリーも面白いです。ただこの作品は、女の子たちがみんな思慮深く描かれている反面、主人公の印象が薄く、なぜ彼女たちが彼を好きになるのかが今一つ納得できないのが、個人的に欠点だと感じました。
ゲームという媒体でトランスジェンダーを扱うことの強みは、やはり当事者の気持ちを体験できることだと思います。私自身を含む非トランスジェンダーは、トランスジェンダーの人がそばにいても気付かないことも多いですが(隠している人もいるため)、ゲームを通じてそういう人たちが存在することやその気持ちを理解するだけでも、現実を良い方向へ変えることにつながるのではないかと思います。
前編ではあくまで少し昔の商業ゲームの紹介をしましたが、最近は同人などでもトランスジェンダーを取り上げたゲームを結構見かけるようになりました。攻略対象だけでなく、プレイヤーも性別や性自認を選べるゲームが増えています。後編でそういった作品を紹介したいと思います。
前編ではあくまで少し昔の商業ゲームの紹介をしましたが、最近は同人などでもトランスジェンダーを取り上げたゲームを結構見かけるようになりました。攻略対象だけでなく、プレイヤーも性別や性自認を選べるゲームが増えています。後編でそういった作品を紹介したいと思います。
おまけ:レアかもしれない
