近年は、政策の一環として「ダイバーシティ」という言葉をよく聞きます。「多様性」という意味で、いろんな国籍・民族はもちろん、年齢や性別、障害の有無や性的マイノリティーなど様々な属性を持つ人々の共存を指す文脈で使われます。(念のため注記すると、なにかの「街」のことではありません。英語ではdiversityで一語です。)世界ではスタンダードになってきている思想ですが、閉鎖的な日本社会で多様性を認める考え方が定着するのは、世の中の動向を見る限りまだ先になりそうです。
そこで私が推したいのは、歴史ある牧場物語シリーズの外伝である「ルーンファクトリー」シリーズ(マーベラスAQL)です。農作業や酪農をして町の中で暮らしていくという本流の育成シミュレーションの形を継承しつつ、ファンタジー世界を舞台としてRPG要素を加えた作品です。私はルーンファクトリー3から初めてプレイして、後に1、2、4とオーシャンズもプレイしました。私個人の感想としては、3からかなり明確に「多様性の共存」を真正面から描いている優れた作品だと思いました。
ルーンファクトリー3の舞台は、大きな樹がシンボルとなっているシアレンスの町。主人公はなぜか金色のモコモコ(二足歩行の羊みたいな生き物)に変身できるモンスターハーフで、嵐の夜、町に迷いこんできます。町長の孫娘、シアに助けられた主人公は、目覚めると記憶を失っていました。シアの提案で、主人公はシアレンスの樹の家の住人となり、畑を耕しながら町で生活していくことになります。その合間に、町のまわりにあるダンジョンを攻略していくことで、ストーリーが進行していきます。主人公の記憶は取り戻せるのか。そして、モンスターハーフであることを知られたらどうなるのか。恋愛要素もあり、最終的には結婚して子供を作ることもできます。時間制限は全くないので、自分のペースで進めていけるのが有難いです。
町にはエルフ、ドワーフといった別種族も一緒に暮らしていますが、人間との関係は必ずしも良好ではないことも示されています。2でも露骨に人間を嫌うハーフエルフの子がいました。生真面目な性格の子はそのことで悩んだりする一方、全く意に介さない子もいるので、そうした現状のとらえ方も現実と同じように人それぞれということでしょう。4ではついに、神様扱いされていたネイティブドラゴンと人々が友人として関係を築いているという設定になっており、このシリーズのテーマが「種族を越えた絆」であり、「多様性の共存」であることは確実だと考えます。
また、据え置き機向けに発売された「ルーンファクトリーフロンティア」や「ルーンファクトリーオーシャンズ」では、ふくよかな女の子(ユーニ)や顔に傷がある女の子(オデット)が結婚対象になるという点も、別の面で画期的だと思います。ふくよかな女の子がダイエットに励む展開はよそでもたまに見ますが、このゲームの場合やせなくても結婚できるということ、オデットも顔に傷があるいきさつをさらっと話して本人は全然気にしていないというところも、配慮されていると思います。
シリーズを通して登場する、大金持ちの変人一族ヴィヴィアージュ家の人たちも、最初はそれほどでもなかったのが、3からかなり変人度がアップしています。「何でも反対のことを言う」設定や、一見普通そうなお姉さん(エリザ)のすごい服飾センスは、見事なキャラ造形です。そして、4に登場するポコリーヌは天才シェフにして、男性が好きな男性。漫画などでは昔からオカマキャラのステレオタイプギャグがありましたし、正直4でもその傾向はありますが、ポコリーヌはそれ以上に、困っている人に躊躇なく手を差し伸べる懐の深い人物として描かれています。(オーシャンズでも、ゲイ男性と思われる教会の牧師が登場します。)
ルーンファクトリーはシリーズを経るにつれて、そういったキャラの幅がどんどん拡大している感があります。まだレズビアンや障害者などは登場していませんが、ルーンファクトリーの世界観ならそういうキャラがいても違和感ないし、むしろ今後出していってほしいと思います。
3のストーリー後半では、竜角人という過去に町から追放された別種族と町の住人達との和解のエピソードもあります。惜しむらくは、実際に過去の追放の原因が何だったのか明らかになっていない点、また住人が基本的にいい人ばかりなので、こうした衝突を解決する上であまり苦労がなかったところでしょうか。(全年齢指定のゲームであるゆえの限界もあるかもしれません。)ゲームでは、偏見にこだわっていたのがお年寄りだけだったのでスムーズに行きましたが、あるべき姿だと思いつつも現実はなかなかそうはいかないよな~と、ちょっと考えてしまいました。しかし、いい意味で非常に教育的な内容であり、私は自分に子供がいたらぜひやらせたい作品だと思います。
後からプレイした印象では、1、2はストーリーは面白くても、操作性やシステムの不備に不満を感じるところが多々ありました。1で走るのにRボタン同時押しはすごく不便でした…。戦闘も後のシリーズより厳しめな気がします。2は2世代のプレイを前提にした特殊な構成で、普通にプレイしていても親世代はイベントを楽しむ余裕もなく、異常に早く結婚できてしまいます。しかも結婚すると奥さんは家から一歩も出ず、行事にも参加できないという理不尽な仕様は、ブラックジョークにしか思えません…。処理落ちも顕著でしたし。このへんは、3から大きく改善されたことが窺えます。(それもあって3は高評価で、中古価格もプレミアがついています。)
ちなみに4では主人公を最初から男女選べるようになっていますが、町の人との通常会話は男女共通らしく、男性主人公でもなぜか次第にポコリーヌ以外の男性からもモテモテな雰囲気になっていきます。(恋人になるのと結婚は異性のみ可能)この現象はシステムの都合ですが、これはこれで嬉しい人がいるかもしれません。私はまだ女性主人公をプレイしていないのですけど、せっかくだから女性主人公でもこのモテ天国を体験してみたいですね。あ、特に触れてませんでしたが、もちろん女性陣もみんな魅力的です!いいキャラなのに結婚対象じゃないのは、ルーンファクトリーあるある…。(私は3のしののめさんが好きでした。)
個人的には、出産・育児の描写ももっとしっかりやってほしいと思います。今の表現だと放置していれば勝手に赤ちゃんが生まれて、勝手に育ってくれると、プレイする子供が思いかねません。(昔の男性は本当にそうだったのだろうけど、現代では許されないでしょう。)そのあたり、男性主人公でももっと育児をしてみたいです。(4では前より改善されていますが、まだまだだと感じます。)レーティングとの兼ね合いもあるでしょうが、そこは頑張って工夫してほしいですね。かつ、あえて結婚しない場合の専用のルートとかもあると、選択の幅が増えていいと思うのですが。
一応ストーリーは4で完結しているので、後続の作品を出すのは難しいかもしれませんが、プロデューサーのはしもとよしふみさんはやる気ありそうなので期待しています。(つい先日、10周年記念で公式ブログが更新されています!)この素晴らしい多様性の物語がもっと発展してほしい、もっとプレイしたい!と願います。
4の公式サイトはこちら
3はこちら
ついに新作5が2021年に発売!公式サイトはこちら