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最終更新日:2019年10月28日

2017年1月15日

ペルソナ5:あえてジェンダー論的観点から

※この文章は私の時事問題用Twitterアカウント(moo40s)での発言をまとめて、追加修正したものです。

2016年9月に発売されたセガ/アトラスの待望の新作「ペルソナ5」(PS3/PS4)は、全体的にすごい風刺を散りばめた、ボリューム的にも内容的にも大満足な作品でした。あまりに風刺が鋭くて、無邪気に楽しめない感もあるのですが、よくぞ今の時勢にこの作品を出してくれたと感服します。この作品の一般的なレビューは、以下を見ていただければよろしいかと。私もおおむね同意です。

IGN Japan:ペルソナ5 Review

普通のレビューは他にもたくさんあると思うので、この記事ではあえてあまり着目する人がいないであろう、ジェンダー論的観点からの指摘をしたいと思います。


良かった点

以前話題になったファイナルファンタジーでの女性蔑視問題と比較すると、ペルソナ5は日本製としては本当の意味で世界市場を意識している方だと思います。特に今回のヒロイン、高巻杏ちゃんの造形が良いです。いわゆる萌えオタ向け要素がほとんどない。(怪盗衣装はキャットウーマンだけど。)

喋り方もすごくリアルで、CVの水樹奈々さんものびのび演じられたのでは。怪盗としての活躍はもちろん、コープの話もとことん前向きで良い。まわりに流されることに抗うことを決意し、ヒーローに助けられる存在ではなく、あくまで自分の意志と行動で運命を切り開こうとする。ゲームの対象年齢は中高生以上だと思いますが、杏ちゃんは若い女の子のロールモデルになり得る。日本のゲームでは貴重なことです。

料理ネタが廃止されたのも、世界市場を意識する上では良かったと思います。ペルソナ4では大きなネタでしたが、当然のように女性だけが料理の腕前を問われ、その下手さをギャグにするのは今の世界基準ではアウトでしょう。

女子生徒に性暴力を行う体育教師を最初のターゲットにするのも、かなり挑戦的な設定でしたが(彼がやっていたことはセクハラですまされるレベルではないと思いますが)、実際の被害内容がにごした表現だったのは、個人的に若干不満でした。直接的にショッキングに描けばいいというものでもないし、もちろんコンシューマ用としての規制もあるでしょうから、難しい問題ですね。

良くなかった点

1.杏が「視線を感じる」と言った時に、竜司が「自意識過剰」と茶化した場面。彼は悪気ないのでしょうが、そういう言葉で被害者を黙らせた結果、取り返しのつかないことになった実例は山ほどあります。

2.砂漠をドライブ中に、女性陣のシャツが汗で透けるセクシーショットをわざわざムービーで挿入(本筋には全く関係ない)。しかも主人公もガン見。浴衣や水着シーンでもセクシー表現をわざわざムービーで挿入。

3.セレブのおっさんから紹介状をもらうために、女性陣が水着で色仕掛けすることを強要される。ここは、女の子たちの自主的な発案にした方がよかったのでは。竜司が一方的に役目を押し付ける形で、男は見てるだけという構図はどうかと。(個人的には、ここも杏ちゃんのいい見せ場だったと思いますが。)

↑このあたりは、日本的な感覚が残っていると感じざるを得ません。ぜひもっと配慮をいき届かせて、より世界に受け入れられるようにしてほしいと思います。

しかしながら、全体としては本当にかなり頑張った、今の日本に対して切実なメッセージが込められた秀作でした。「デキる奴に男も女も関係ない」というような台詞があったり、ラスボス後のエピローグが長いのも、ペルソナという特別な能力がなくてもできることがあることを伝えたかったのだと思います。反権力・反体制の精神を打ち出しつつ、最後はプレイしている私達自身にも深い問いを突きつける、見事な作品でした。

ペルソナ5は出荷55万本突破したそうで、それだけの人にメッセージを届けられるということは、決して娯楽は無力ではないということだと私は考えます。アトラスのスタッフには、これからもクリエイターとして臆することなく、世の中の問題に切り込んでいく作品を作ってほしいと願います。


最後に英語版のPVを紹介: